文章を書くのが苦手だった。特に読書感想文が苦手だった。
読書感想文と言うのは皮肉なものだ。
自分が読んだ本に刺激を受け、それに対する考察をパブリッシュしたくて筆を取るなら「読書感想文」と呼んでいいものだが、夏休みの課題として出され、「書物の感想を書く」のではなく、「感想文を書く為に、したくも無い読書をさせらる」のだから逆転現象も甚だしい。
確か小学校2年生くらいだった。その日担任が有休をとったのか、毎時間違う先生が自習監督にきた。
冒頭15分くらいだっただろうか、国語の時間に来た自習監督の先生は、絵本(だったと思う)を我々に読み聞かせ、作文用紙を配り、残りの時間は執筆に充てられた。
兎に角筆が走らない、いや一歩も進まない。感想など無い。当然、今となっては内容は覚えていない。きっとハッピーエンドだったかも知れない。「最後主人公はハッピーになって良かったと思います」と何の考察にもならないアウトプットをしても何にもならないことに、本能的に気が付いていた様な気もする。
時計の針が進むにつれ、焦りは増大し、私のほぼ初めての読書感想文は、絵本のハッピーエンドとは真逆の「絶望」を迎えんとしていた。
残酷にもチャイムは鳴り、自習監督の先生の指示に従い、私を含む一番後ろの座席の児童たちは、自分の列の作品たちを回収して、提出して行く。
幾分お勉強ができて自尊心の高かった私は、ポロポロと涙を流しながら、自分の列の回収を終え、先生に提出した。
私はその本の感想を一文字も書くことができなかったが、読書感想文に対する「感想」を手に入れた。30年の時を経て、あの時の悔し涙をここに回収する。

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