シングルモルトの嗜み方

会社の友人の新居探しに同行した。

本人、私、もう一人の友人で。「友人二人も連れて内覧のケースは初めてです」と、不動産屋は笑った。

同棲していて結婚目前だったが、他人から見れば「そんなことで」と思うことで破局した為、急遽、新居が必要になった。彼が彼女を本気で愛していたのは知っている。「愛情が故の行動が、裏目に出てそういう結果になったのだから、その『愛情』を理解できなかった人とはそれまでではないか」とは思うものの、二人にしかわからないこともあるから、特にこれについては考察しない。でも、まあ世間一般的によくある話だ。

引っ越しをする理由は様々だ。進学、転勤、結婚、同棲、離婚。或いは、その土地に憧れてとか、2年に1度は引っ越すことにしているとか。いずれにしても、その人の「人生に」と言えば大袈裟かも知れないが、「生活に」はかなりのインパクトを与える。

自分の人生が苦しいという切実なもので無くとも、小さい不満があったり、飽きが来ていたりなどの理由で、人生に変化を起こしたい時があるかも知れない。

タイムラインに流れてくる名言のコピペだが、

・習慣を変える

・付き合う人間を変える

・住む場所を変える

…ことで、自分や人生に変化やインパクトが与えらるらしい。

まあ、私と同世代であれば、もう変化より安定が欲しいだろうか。

一つ目は、コンクリート打ちっ放しのシャレオツ物件。部屋を分断するパーテーションが和のデザインでユニークだが日当たりは最悪。二つ目は、床が明るめの色の、どちらかと言うと女性が好きそうな内装。只、一階で、向かいの戸建ての陰になり、日当たりは余りよろしくない。三件目が本命で、パーテーションを開けっ放しにしておけば、かなり開放的な空間だ。日当たり良好。最後の物件は、一番築年数が若かったが、やはり窓の向きにより、終日の点灯が必要だった。

「破局後の一人暮らし」文字に起こせば悲惨だが、恐らく、新しい家具を揃えたり、我々と新居パーティなんか催したりなんかしちゃったりして、身軽になった生活を楽しむ彼を、私は割と高解像度で想像できる。彼は、本命物件に決め、我々は解散した。

我々3人は今後、新設オフィスに移動予定で、職場も同じ、居住エリアも一駅違えどご近所だ。めちゃめちゃ気が合うかと言えば、多分そうでもないが、仕事の愚痴を言い合ったり、独身で持て余した時間をシェアするには適任同士だ。

なんだかその日はリア充していて、物件ツアー解散後、同級生のバツイチ、独身の男とサシで飲んだ。

二十代半ばに十代の娘(こ)と結婚したが、相手の浮気が原因で離婚。その後、それが若干トラウマになり、どの女の子とも長続きせず。付き合っては別れを繰り返している。タイプの違う私たち二人だが、拗らせ方がだいたい同じで、悲しいかな一緒に飲んでいて悪い気はしない。

我々は、翌月合コンか、相席居酒屋に行くことを約束し別れた。

あの時あの子と結婚してれば、なんて思ったこともあるけど、何だかんだ今が一番幸せだ。結婚や子供も、それはそれで幸せかも知れないが、これはこれでハッピーだ。

「娘は可愛いけど嫁は恐い」なんて愚痴を肴に、私は「シングル」と名付けられた、やや拗らせた、しかし味わい深い酒を今日も嗜む。

友よ。暫くは俺と、この酒を楽しもう。その酒を心から楽しめる者には、きっと次の酒が用意されている。

「乾杯」

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